おとてく

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作曲家/レコーディングエンジニアが書く、DTM、作曲、レコーディングメディア。

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今でも何故ハードウェアのコンプレッサーを使うのか?最大の理由は「掛け録り」!?

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「現在は優秀なプラグイン(=ソフトウェア)がたくさんあるのに、

なぜアナログの実機(=ハードウェア)のコンプレッサーを使うの?」

という話。

 

レコーディングスタジオなんかだと、大きなコンプレッサーが壁のようにたくさんラックマウントされてますね。

今やプラグインが10分の1以下の値段で買えるのに、なんでデジタル全盛の時代にアナログのハードウェアが使われているのでしょう?

 

もちろん、プラグインとは音がちがうというのも理由。

あと、大きなアウトボード*1が揃っているとハッタリになるという理由も少しはあります。笑

 

でも、最大の理由は他にあるんです。

それがこちら! 

最大の理由は「掛け録り」 にアリ

ハードウェアのコンプを使う最大の理由は、

制作時やミックス時ではなく、録音時にあります。

掛け録りはハードウェアじゃなきゃできない

「掛け録り」というのは、コンプレッサーなどのエフェクターをかけた状態の音を録音することです。

当然、オーディオインターフェイスに入る前にかけることになりますので、こればっかりはプラグインを使いようがないんですね。*2

 

掛け録りをする理由・メリット

演奏がしやすい

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コンプレッサーが掛かった状態の音を録ることで、

ダイナミクスを抑えた音を聴きながら演奏できます

 

例えば歌を録るとしましょう。

元々の音量のレンジだと、

Aメロは静かに歌っているから自分の声が聴きにくいけど、

サビは大きく歌っているから逆にオケが聴きにくい

みたいなことが起きるわけですね。

 

コンプでレンジを埋めることでそれが改善され、演奏しやすいバランスに持っていくことが出来るのです。

 

ピークを抑えられる

「ピーク」というのは「先端」とか「山頂」とかの意味で、

音量レベルの急激に大きくなったポイントを指します。

このピークは、聴いている分には大きく感じられないのに、DAWのメーターでは大きく反応したりします。*3

このピークを抑えることで、録り音のレベルオーバーを防ぐことができるわけです。 

 

音のキャラクターを決めた状態で録れる

録った時点でコンプレッサーが掛かっていますから、最初からある程度キャラクター付けができます。

ミックス時にやることが1つ減るわけですね。

 

特にアナログの機材の中には、通すだけで独特の音になるものもあります。

人気のヴィンテージ機種なんかはその独特の音が好まれて、今でも人気があるわけです。

 

掛け録りのデメリット

後戻りできない

一旦コンプを掛けた音で録ってしまったら元には戻せません

その辺りはいつでも外せるプラグインとは大きく違いますね。 

 

コンプの動作タイプによっては、原音のイメージを変えてしまうものもあるので注意が必要です。

 

繋ぎ方

繋ぐ順番を間違えないようにしてください!

この図のように、マイク → マイクプリ → コンプレッサー → インターフェイス の順で接続します。

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こちらの図のようにマイクから直接コンプに接続してはいけません

コンプレッサーはラインレベルで入力するように設計されているので、マイクレベルのまま接続しても本来の能力を発揮できません。

平坦な音になりますし、ノイズも増えます。

必ずマイクプリで増幅した後に繋いでください

 

マイクレベルとラインレベルについては、マイクプリを使ってワンランク上の音を録ろう!オススメ機種も紹介!をご覧ください。

掛け録りはデメリットの方が大きい!?

前述の「後戻りできない」というデメリットは非常に大きいです。

もちろん、ちゃんと録れていれば問題はないですけどね。

 

特に怖いのが、コンプの掛け過ぎです。

ピークを抑えられるのがコンプ掛け録りのメリットと書きましたが、

そもそもマイクプリの時点で正しくレベル設定が出来ているのが前提です。

マイクプリでレベルを突っ込みすぎると、コンプの掛かり過ぎで歪みっぽい音になったり、抜けの悪い音になってしまいます。

 

逆に、マイクプリでのレベルの増幅が足りないのも問題です。

この場合、コンプのインプット/アウトプットレベルを上げてむりやり辻褄を合わせることになります。

こうすると薄っぺらい音になってしまうんです。

あくまでレベルを増幅するのはマイクプリの役割であって、コンプは音量のレンジを埋めるものです。

 

なので、まずマイクプリでのレベル設定がちゃんとできないと、コンプ掛け録りはデメリットの方が大きいと言わざるをえないでしょう。

いずれにせよ、掛け録りでのコンプはごくごく浅めにしておくのがポイントです。

 

まとめ

・ハードウェアのコンプレッサーを使う理由は、「掛け録りをするため」 。

・ 掛け録りには、「演奏がしやすい」、「ピークを抑えられる」、「録音時にキャラクター付けができる」といったメリットがある。

・しかし、失敗すると元には戻せないというデメリットがある。

 

コンプの掛け録りはメリットも大きいですが、正しく使わないとデメリットも非常に大きいです。

とはいえ、最近では宅録向けの安くて優秀なコンプレッサーもリリースされていますので、興味のある方は導入してみてはいかがでしょうか?

 

コンプレッサー一覧 | サウンドハウス

 

 

 

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*1:ミキサー内部のEQやコンプではなく、外部に付け加えられた機材のことを指します。

*2:DAW内部で一旦AUXトラックやインプットトラックを介すことで、プラグインを掛け録りすることもできるにはできるんですが、レイテンシー(遅延)が発生するなどデメリットが多いので一般的ではありません。

ただ、UADなど一部のオーディオインターフェイスでは、DSPで動作するプラグインを低レイテンシーで掛け録りできます。

*3:人間の耳は意外と鈍感で、一瞬の短い音の大きさを正確に感じられないのです。