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DAW上でのミックスでもVUメーターは非常に有効!音量の基準を設けよう!

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ミックスをする際につまずきがちなのが、音量の問題です。

「まだミックスの途中なのにマスターフェーダーがクリップした!仕方ないから全部のchのフェーダーを下げよう!」

みたいなことはミックスの初心者に"あるある"なミスで、誰しもが経験することかと思います。

 

また、数曲を同時にミックスしたら曲ごとに音量感がまちまちになってしまった!なんていう失敗も。

 

そこでオススメしたいのがVUメーターです。

VUメーターを使って音量の基準を設けることで、ミックス時の音量問題を解決してしまいましょう!

その使い方を紹介していきます。

VUメーターとピークメーター

VUメーターの他によく使われているメーターとして、ピークメーターがあります。

まずは、この2種類がどう違うのか、見ていきましょう。

VUメーターは音量感を指し示してくれる

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VUメーター(Volume Unit Meter)は、音量感を指し示してくれるメーターです。

 

VUメーターは、音がメーターに入ってきてから針が振り終わるまでに300msec*1かかります。0.3秒です。 

そのため、短い音に対しては、正確な音量を指し示すことができません。

針がまだ途中にある段階で振るのをやめてしまうので、0.3秒に達しない音は実際よりも小さく表示されます。

 

「そんないい加減な!」と思うかもしれませんが、それでいいのです。

なぜなら、人間の耳も、短い音を実際よりも小さく感じるから。

 

だから、音量ではなく音量を指し示すメーターなのですね。

物理的な量ではなく、感覚的、心理的な量ということです。

つまり、VUメーターは人間の感じる音の大きさを再現してくれているのです。

 

ピークメーターは最大値を指し示してくれる  

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だったらVUメーターだけがあれば良さそうなもんですが、そうもいきません。

 

アナログのテープレコーダーなんかだと、ちょっとくらいレベルオーバーしてもいきなり歪むということはありませんでした。

ところが、DAW等のデジタルレコーダーに録音する際には、一瞬でも規定のレベル(0dBFS*2 )をオーバーしたら音が歪んでしまうのです。

 

一瞬でも、です。

なので、「針がちゃんと振れ終わるまで0.3秒かかるよ〜」なんて言ってるのん気なVUメーター君ではダメなんですね。

 

そこで登場したのが、ピークメーター(Peak Programme Metar : PPM)です。

ピークメーターは、その名の通りピーク(最大値)を指し示してくれます。

 

VUメーターでは計測できない瞬間的な音でも正確な物理的音量を指し示してくれるので、レベルオーバーの監視に使われているのです。

デジタルの録音機器には必ずピークメーターが付いています。 

 

つまり、この2種類はこんな風に使い分けられています。

VUメーター

音量感を確認する」

ピークメーター

レベルオーバーを監視する」

  

ちなみに・・・

この2種類、安易に見た目で判断できません。

イメージでは、VUメーターが針式で、ピークメーターがLEDとかのバーグラフという感じですよね。

 

ですが、針式のピークメーターバーグラフのVUメーターも存在します

実際、SSLのバスコンプのメーターなんかは針式ですがピークメーターですし、

Pro Toolsのメーターはバーグラフの見た目のままVU↔︎ピークを切り替えられます。

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針式ピークメーターの例。SSLバスコンプ(左)、Neve33609(右)。

 

見分けるポイントとしては、

 

VUメーターはこんな感じで真ん中ちょい右に0があって、そこからが赤色になっているという点(全部が全部じゃないけど)。

あと、VUの方が振れ方が遅いというのもポイントです。

 

ミックス時に基準としてVUメーターを使う

では、実際にミックス時にどのようにVUメーターを使うのか説明します。

手順

①マスターにVUメーターをインサート

本当なら実機のVUメーターを使えればいいんですが、実機のVUメーターって高いんですよ。

サウンドハウスで安いやつ探してもこれくらい。ウン万もしてしまいます。↓

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TOMOCA ( トモカ ) / AMU-2SII

 

なのでプラグインのVUメーターを使う前提でいきます。

(先日のブラックフライデーでWavesがVUメーターを無償配布していましたので、入手した人も多いんじゃないでしょうか) 

 

もしくは、Pro Toolsのように、マスターのメーター自体をピークメーターやVUメーターなどから選べるものはそれを使うのがいいでしょう。

 

 

②キャリブレーションをとる

「キャリブレーションをとる」ってカッコつけた言い方ですが、要は目盛りの調整のことです。

「リファレンスレベルを合わせる」と言う人もいます。

まぁ言い方はどうでもいいんです。

 

何をどう合わせるかというと、

どれくらいの音量が入ってきた時に、針が0VUまで振れるかの調整です。 

もうちょっと具体的にいうと、1kHzのサイン波が何dBの時に針が0を指し示すか、です。

 

これは国によってまちまちで、

日本ではJAPRS(ジャプルス=社団法人日本音楽スタジオ協会)の定めた

デジタル上での-16dB = VUメーター上での0VU

というのが基準とされていて、僕もこれに慣れています。

 

ただ、放送系のスタジオなんかだと「-18dB=0VU」や「-20dB=0VU」なんかが使われているのが実際で、業界によってもまちまちだと言えます。

-20dB=0VUなんかだと、比較的小さな音でも0まで到達するということですから、よく針が触れていても実際には音は小さめ、ということですね。 

※キャリブレーションの取り方自体は各プラグインの説明書を読んでくださいね!

 

 

③ミックスのスタート地点の音量を決める

本題。ではVUをどう使うのか。

ミックスする度に音量感がまちまちになってしまう原因として、スタート時の音量が毎回違うからというのが挙げられます。 

そこで、自分のなかでスタート地点の音量を決めてしまうのです。

 

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僕の場合は、ベースの音量をスタートにしています。

まずベースのトラックだけをソロで鳴らし、VUメーターが-10VU〜-7VUくらい振れるように音量を調整します。

この時マスターフェーダーには触らないでくださいね。

あくまで動かすのはベースの音量です。

 

ベースの音量が決まったら、そこに他の音を足してバランスを取っていくわけです。

 

これはあくまで僕の場合です。ベースじゃなくてもいいんです。

人によって「キックで-5VU」とか、「キックとベースで-3VU」とかまちまちですが、土台となるパートから始めた方がやりやすいのは言えるでしょう。

 

もっとも良いのは、何曲もミックスして、納得の出来になった作品の音量感を把握しておくこと。

たとえば、その作品のベースが-7VUだったら、「自分がいいバランスを作るにはベースは-7VUからスタートすればいいんだ」と、ひとつの基準を作ることができます。

おわりに

今回紹介した手法は、あくまでミックス時の基準音量を決めただけです。

しかし、スタート地点の音量を決めておくだけで、バランスを取るのが格段に早くなりますし、迷いがなくなります

 

また、バランスを取る際には、あまり爆音にはしないでください。

そのあたりの理由は、音量を下げるとミックスの印象が変わる!?「等ラウドネス曲線」と「ラウドネス効果」を知って楽曲制作のクオリティを上げよう!で触れていますので、よろしければご覧ください。

 

ちなみに、VUメーターと似たメーターにRMSメーター(Root Mean Square value Meter)があります。

日本語にすると「実効値」メーター。「平均値」を表示するメーターといった方が感覚的に分かりやすいかもしれません。

 

この2つを混同してしまっている人もいますが、似て非なるものです。

こちらも音量感を確認するのに向いていますから、VUと同じように使えますけどね。

ただしRMSメーターの方が大きめに振れる傾向がありますので、注意してください。

 

 

 

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*1:ミリセカンド、ミリセック、ミリ秒などと読みます。1000分の1秒のこと。

*2:dBFS=デシベル・フル・スケール。デジタルで表現可能な最大値。