おとてく

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作曲家/レコーディングエンジニアが書く、DTM、作曲、レコーディングメディア。

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いろんなアナログコンプレッサーの"通しただけ"やってみた

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かつての名機もプラグインで再現され、10分の1以下の値段で買えるようになった昨今。

でも、 アナログ機材がなくなっていくわけではなく、今でも各メーカーから様々な商品がリリースされていますね。

 

その理由のひとつが、アナログ機材独特の味付けサチュレーション*1にあります

 

今回は、いろんなアナログアウトボード、おもにコンプレッサーに"通しただけ"で音がどうなるのか実験してみました!

聴き比べ

では、早速聴き比べ。

まずは通す前のオリジナルの音。

キックとスネアにマイクを立て、それにオフマイクを混ぜています。

この音を、色んなコンプレッサーに通していきます。

全て、"通すだけ"ですので、コンプレッションさせていません

バイパスやオフではなく、レシオ1:1やスレッショルド∞と言った設定で、コンプレッションしないようにしています。

 

 

では、聴き比べてみましょう!

 

全て、オリジナル → アナログ機材を通した音 の順で収録されています。 

以下、僕の主観で感想を書いていきます。

星をつけていますが、味付け感については、良くなった悪くなったではなく、オリジナルに対してキャラクターが付加されたと感じたものに対して多く星をつけています。 

 

Universal Audio 1176LN

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トップバッターはUniversal Audio 1176LN

 

FETタイプのコンプレッサー。まぁスタジオ機材のド定番ですね。

このコンプはインプットを突っ込むと自動的にコンプがかかってしまうので、例外的にOFF状態で試してます。

 

ノイズ量:多

味付け感:★★★★★

お手頃さ:★☆☆☆☆

 

キックの雰囲気が変わったという印象を受けました。

ルーズというか丸くなった感じですね。

はっきりとサチュレーションしており、サーッというノイズも多めです。

 

Universal Audio 1176LN|サウンドハウス

 

dbx 160A 

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各メーカーからモデリングプラグインがリリースされている名機160ではなく、今回は160A

 

とはいえ、この160Aもその流れを汲むVCAコンプレッサーで、

クリーンなサウンド、シンプルな操作性、視認性の良さでPA/レコーディングを問わず人気の機種です。

 

ノイズ量:少

味付け感:★☆☆☆☆

お手頃さ:★★★★☆

 

サチュレーションはほぼ無しと言っていいでしょう。

ややおとなしくなったかな?という感もありますが、色付けは薄いですね。

値段的にまぁまぁお手頃ではありますが、通すだけの味付け目的に導入するのは違うかなと。

 

dbx 160A|サウンドハウス

 

DRAWMER 1960

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続いて、真空管コンプレッサー内蔵型マイクプリのDRAWMER 1960

 

こちらはマイクプリではあるものの、今回はライン入力することでプリアンプ部を経由せず、コンプのみを使用しています。

 

ノイズ量:多

味付け感:★★★★☆

お手頃さ:★☆☆☆☆

 

しっかりとサチュレーションしており、わずかながらキックが引き締まった印象です。

ノイズが結構乗ってますので、無音部分はDAW上での処理必須です。

 

DRAWMER 1960|サウンドハウス

 

 

TUBE-TECH CL1B

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青いパネルでおなじみのTUBE-TECH CL1B

 

オプティカルタイプのコンプレッサーですが、アウトプット段に真空管アンプを搭載しています。

ヴォーカルの掛け録りでもよく使われる機種です。

 

ノイズ量:少

味付け感:★☆☆☆☆

お手頃さ:★☆☆☆☆

 

アウトプットで真空管を通るとはいえ、いわゆる真空管のイメージ(ざらついた、歪っぽい)は感じられません。

むしろクリーンで柔らかい音ですね。

とはいえ、変化してそうなったというより、元音を割とナチュラルに出力しているという印象でしょうか。

 

TUBE-TECH CL1B|サウンドハウス

 

SUMMIT AUDIO 2BA-221

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こちらは唯一コンプではありません

SUMMIT AUDIOのマイクプリ、2BA-221

 

やはり出力段に真空管を装備している機種です。

 

ライン入力でプリアンプ部を経由せず、真空管セクションのみを通しました。

 

ノイズ量:多

味付け感:★★★★☆

お手頃さ:★★★☆☆

 

真空管と聞いてイメージする音はこっちですかね。

ざらついた質感がプラスされた印象です。

 

SUMMIT AUDIO 2BA-221|サウンドハウス

DJI

FMR AUDIO RNC1773

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お次は、リーズナブルなので個人ユーザーも多いと思われるFMR AUDIO RNC1773です。

 

内部でコンプレッサーを3段掛けしてスムーズな圧縮を得ようという"スーパーナイスモード"が使える珍しいタイプのコンプです。

今回は、スーパーナイスモードの状態で、ただしコンプレッションはさせずに試してみました。

 

ノイズ量:中

味付け感:★★★★★

お手頃さ:★★★★★

 

メーカーの謳い文句的には色付けの少ないコンプとのことですが、

むしろしっかりとキャラクターが付加されたように感じました。

高域が明るくなった感があります。

 

非常にお手頃価格で、もちろんコンプレッサーとしても優秀なのでオススメです。

 

FMR AUDIO RNC1773|サウンドハウス

 

Neve 33609J

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モデリングプラグインがいくつかリリースされているNeve 33609

 

スムーズなコンプレッションが人気のVCAタイプのコンプレッサーで、A、C、J、JD、Nといったバージョン違いがあります。

今回は33609Jでのレビューです。

 

ノイズ量:中

味付け感:★★☆☆☆

お手頃さ:★☆☆☆☆

 

サチュレーションもあまりせず、劇的に質感が変わったわけではないですね。

"通すだけ"に使ってる人も多い機種ですが、キャラクター付けも若干はあるものの、マスターやドラムバスなどにかけて音をまとめる方が適した機種かなと。

 

NEVE 33609N|イケベ楽器店

 

SSL Bus Compressor(Duality SE)

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こちらもプラグインでおなじみのSSL Bus Compressor

 

基本的に単体で売られているものではなく*2、SSLのコンソールに組み込まれているマスターコンプです。※写真の丸で囲ったところ。

今回はSSLのDuality SEというコンソールに搭載されているバスコンプを使用しました。

 

ノイズ量:中

味付け感:★★★☆☆

お手頃さ:☆☆☆☆☆

 

33609同様、音をまとめる目的で"通すだけ"をしている人も多いSSLのバスコンプですが、

こちらはサチュレーションもしており、若干の変化はありますね。

コンプレッションさせていないのに緩くコンプをかけた感じで音がまとまってます。

 

SSL Duality|Solid State Logic Japan

 

まとめ

以上、いかがだったでしょう?

 

劇的に音が変わるのを期待していた人には拍子抜けの結果だったかもしれませんね。

変化するといってもあくまで色付け味付け程度のもの。

 

もちろんアナログ機材なのでコンディションの個体差はありますが、

アナログアウトボードは、通すだけで劇的に音が良くなる魔法ではないということは言えます。

 

色々と偉そうなこと書き連ねましたが、僕自身ブラインドテストもやってみまして、

ブラインドでもハッキリと違いがわかったのは1176LNとRNC1773だけでした。(お恥ずかしい・・・笑)

 

とはいえ、やはりデジタルにはないキャラクターの付加は魅力ではあります。

実際、複数の素材に共通のコンプを通すと、

バラバラだった素材に"まとまる"感じが出たり、空気感が増したりするのは、僕自身肌で感じてます。

 

安い買い物ではないので、通すだけの目的で導入するなんて人はいないでしょうが、すでにアナログ機材をお持ちの方は、一度"通しただけ"を試してみてはどうでしょうか?

 

 

 

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*1:直訳すると「飽和」。大入力によって歪むこと。

「オーバードライブ」ではなく「サチュレーション」と言った場合は、歪ませるというより「原音にはない倍音が付加された」くらいのニュアンス。

*2:ただし、ラックマウントタイプや、APIのランチボックスに挿して使うタイプなどはあります。