おとてく

おとてく

作曲家/レコーディングエンジニアが書く、DTM、作曲、レコーディングメディア。

当ブログは、アフィリエイト広告を利用、またはプロモーション記事を含む場合があります。

ケーブルのバランスとアンバランスってどう違うの?

f:id:oto_tech:20171225153424p:plain

今回は、オーディオケーブルのバランス伝送アンバランス伝送のお話!

 

「バランスはノイズに強い」というのは漠然とご存知の方も多いかと思います。

けど、一体それはなぜなのか、アンバランスとは何が違うのか、といったことを書いていきます。

 

ではまずはこちらからご覧ください!

 

グランド ホット コールドとは?

そもそもの話ですが、ケーブルの中身はこんな感じになっています。

f:id:oto_tech:20171225100243p:plain

 

左がバランス伝送

バランスのケーブルの中にはグランドホットコールドという3種類の線が存在しています。

 

右がアンバランス伝送

アンバランスのケーブルの中はグランドホット2種類だけです。 

 

このうち、音声信号が通っているのはホットコールドです。これらを芯線といいます。

 

グランドには音声信号は通っていません。 

ではグランドは何をしているかというと、芯線に外部からのノイズが混入しないように金網で覆っています

これがいわゆるシールドですね。 

 

グランドにはもうひとつ大事な役目がありまして、

それが、機器同士の電位差をなくすということなんですが、それに関してはこちらのサイト様の説明が非常に分かりやすいと感じましたので、ぜひ一度ご覧ください。

(人任せ)

 

とりあえずここまでをまとめます。

バランスのケーブル

2本の芯線(ホット・コールド)をシールドが覆っている」

アンバランスのケーブル

1本の芯線(ホット)をシールドが覆っている」

 

バランス伝送はなぜノイズに強い?

バランス伝送もアンバランス伝送も、どちらとも芯線をシールドが覆っていますので、すでにノイズ対策は施されています。

 

では、なぜバランスの方がノイズに強いとされているのでしょうか? 

バランス伝送のさらなるノイズ対策 〜同相除去〜

バランス伝送では、

シールドによるノイズ対策に加えて、ホットとコールドの2本の芯線があることによって、さらなるノイズ対策がなされています。

 

それが、同相除去(同相ノイズ除去、common mode noise reduction)と呼ばれる仕組みです。

 

バランスケーブルの中では一体何が起きているのか、DAWで模擬的に再現しましたので、

ご覧ください。

 

 

ホットの芯線には正相の信号が流れています。

コールドの芯線には逆相の信号が流れています。

ホットとコールドでは極性が逆になっているわけです。

プラスマイナスが逆というと分かりやすいでしょうか。

f:id:oto_tech:20180102032040p:plain

ホットとコールドではプラスマイナスが逆

 

 

ケーブルの外部から侵入したノイズは、ホット・コールドともに同じように(同じ極性で)乗ります。

f:id:oto_tech:20180102032048p:plain

ノイズはホットとコールドの両方に同じように乗る

 

 

最終的に、ケーブルの終わりでコールドの方は位相の極性を180°反転させて元どおり(=正相)にします。 

ということは、ノイズだけが逆相状態になるので打ち消されるという仕組みです。

f:id:oto_tech:20180102032054p:plain

コールドだけ極性を反転させた結果、ノイズは打ち消される

 

実際のケーブルでの見分け方

フォンケーブル

いわゆるフォンケーブルには、図のようにTRSフォンとTSフォンがあります。

(上がTRS、下がTS)

f:id:oto_tech:20171225140218p:plain

TRSとTS

①・・・S(スリーブ)

②・・・T(チップ)

③・・・R(リング)

と呼びます。

T(チップ)とR(リング)とS(スリーブ)があるのがTRSフォン。

T(チップ)とS(スリーブ)だけなのがTSフォンということです。

(④は絶縁リング)

 

これらはぞれぞれ、

S(スリーブ)がグランドに、

T(チップ)がホットに、

R(リング)がコールドに繋がっています。

 

つまり、

TRSフォン

バランス(ホットとコールドとグランド)

TSフォン

アンバランス(ホットとグランド)

ということが分かります。  

 

キャノンケーブル

キャノンことXLRケーブルのコネクタは、このように3本のピンから成っています。

(左がメス側、右がオス側)

f:id:oto_tech:20171225140222p:plain

XLR

これらはぞれぞれ、

1番ピンがグランドに、

2番ピンがホット*1に、

3番ピンがコールドに繋がっています。

 

つまり、XLRケーブル=バランス伝送に用いられている ということですね。

 

例外 

ただし、TRSフォンには例外があります。

ヘッドフォンなどのステレオケーブル

f:id:oto_tech:20171225144347j:plain

イヤフォンやヘッドフォンに使われているケーブルもTRSになっていますよね。

 

ただし、これはバランス伝送ではなく、

T(チップ)に左チャンネルの信号、R(リング)に右チャンネルの信号を流すことで、

1本のケーブルでステレオ信号を送っています。 

インサーションケーブル

やや特殊な例としては、小型ミキサー等のインサート用ケーブルがあります。

http://www.soundhouse.co.jp/images/shop/prod_img/c/classicpro_ins20x2.jpg

インサーションケーブル CLASSIC PRO / INS202

こういうやつです。

 

ミキサー側のインサート端子はT(チップ)を出力側、R(リング)を入力側とすることで、

1本の端子で行き帰りの両方を兼ねています

 

インサート機器側(コンプ等)ではT(チップ)とR(リング)を二股に分岐してTSフォン2本にするという仕組みです*2

 

詳しくはこちらのサイト様が分かりやすいので、ぜひご覧ください。

(またも人任せ)

 

 

 

この記事を書いた人のTwitterはこちら。 

*1:2番をホットとするというのは1992年に国際標準化されたため、それ以前の古い機材だと3番がホットになっているものもあります(グランドが1番というのは昔から変わりません)。

*2:厳密にいうと片方はチップにリングの信号が流れています。