今回は、オーディオケーブルのバランス伝送とアンバランス伝送のお話!
「バランスはノイズに強い」というのは漠然とご存知の方も多いかと思います。
けど、一体それはなぜなのか、アンバランスとは何が違うのか、といったことを書いていきます。
ではまずはこちらからご覧ください!
グランド ホット コールドとは?
そもそもの話ですが、ケーブルの中身はこんな感じになっています。

左がバランス伝送。
バランスのケーブルの中にはグランド、ホット、コールドという3種類の線が存在しています。
右がアンバランス伝送。
アンバランスのケーブルの中はグランドとホットの2種類だけです。
このうち、音声信号が通っているのはホットとコールドです。これらを芯線といいます。
グランドには音声信号は通っていません。
ではグランドは何をしているかというと、芯線に外部からのノイズが混入しないように金網で覆っています。
これがいわゆるシールドですね。
グランドにはもうひとつ大事な役目がありまして、
それが、機器同士の電位差をなくすということなんですが、それに関してはこちらのサイト様の説明が非常に分かりやすいと感じましたので、ぜひ一度ご覧ください。
(人任せ)
とりあえずここまでをまとめます。
バランスのケーブル:
「2本の芯線(ホット・コールド)をシールドが覆っている」
アンバランスのケーブル:
「1本の芯線(ホット)をシールドが覆っている」
バランス伝送はなぜノイズに強い?
バランス伝送もアンバランス伝送も、どちらとも芯線をシールドが覆っていますので、すでにノイズ対策は施されています。
では、なぜバランスの方がノイズに強いとされているのでしょうか?
バランス伝送のさらなるノイズ対策 〜同相除去〜
バランス伝送では、
シールドによるノイズ対策に加えて、ホットとコールドの2本の芯線があることによって、さらなるノイズ対策がなされています。
それが、同相除去(同相ノイズ除去、common mode noise reduction)と呼ばれる仕組みです。
バランスケーブルの中では一体何が起きているのか、DAWで模擬的に再現しましたので、
ご覧ください。
ホットの芯線には正相の信号が流れています。
コールドの芯線には逆相の信号が流れています。
ホットとコールドでは極性が逆になっているわけです。
プラスマイナスが逆というと分かりやすいでしょうか。
ケーブルの外部から侵入したノイズは、ホット・コールドともに同じように(同じ極性で)乗ります。
最終的に、ケーブルの終わりでコールドの方は位相の極性を180°反転させて元どおり(=正相)にします。
ということは、ノイズだけが逆相状態になるので打ち消されるという仕組みです。
実際のケーブルでの見分け方
フォンケーブル
いわゆるフォンケーブルには、図のようにTRSフォンとTSフォンがあります。
(上がTRS、下がTS)
①・・・S(スリーブ)
②・・・T(チップ)
③・・・R(リング)
と呼びます。
T(チップ)とR(リング)とS(スリーブ)があるのがTRSフォン。
T(チップ)とS(スリーブ)だけなのがTSフォンということです。
(④は絶縁リング)
これらはぞれぞれ、
S(スリーブ)がグランドに、
T(チップ)がホットに、
R(リング)がコールドに繋がっています。
つまり、
TRSフォン:
バランス(ホットとコールドとグランド)
TSフォン:
アンバランス(ホットとグランド)
ということが分かります。
キャノンケーブル
キャノンことXLRケーブルのコネクタは、このように3本のピンから成っています。
(左がメス側、右がオス側)
これらはぞれぞれ、
1番ピンがグランドに、
2番ピンがホット*1に、
3番ピンがコールドに繋がっています。
つまり、XLRケーブル=バランス伝送に用いられている ということですね。
例外
ただし、TRSフォンには例外があります。
ヘッドフォンなどのステレオケーブル
イヤフォンやヘッドフォンに使われているケーブルもTRSになっていますよね。
ただし、これはバランス伝送ではなく、
T(チップ)に左チャンネルの信号、R(リング)に右チャンネルの信号を流すことで、
1本のケーブルでステレオ信号を送っています。
インサーションケーブル
やや特殊な例としては、小型ミキサー等のインサート用ケーブルがあります。
インサーションケーブル CLASSIC PRO / INS202
こういうやつです。
ミキサー側のインサート端子はT(チップ)を出力側、R(リング)を入力側とすることで、
1本の端子で行き帰りの両方を兼ねています。
インサート機器側(コンプ等)ではT(チップ)とR(リング)を二股に分岐してTSフォン2本にするという仕組みです*2。
詳しくはこちらのサイト様が分かりやすいので、ぜひご覧ください。
(またも人任せ)
この記事を書いた人のTwitterはこちら。