『はじめてのチュウ』でおなじみのコロ助声、コロ助ボイスの作り方です。
正確にいうと、『はじめてのチュウ』を歌っているのは「あんしんパパ」こと実川俊晴氏なので、あれをコロ助声というのはおかしいんですけどね。
かといって、"あんしんパパ声"ではなんのこっちゃなので、ここではコロ助声と呼ばせていただきます。
今回はPro Tools での作り方をご紹介します。
コロ助声を作る手順
YouTubeにアップしましたのでご覧ください!
詳細な解説は以下!
歌いたい曲の伴奏を半分のテンポにする
まずは、伴奏(オケ、バックトラック)のテンポを半分に落としてください。
伴奏がMIDIデータであれば、そのままDAW上のテンポを半分にするだけでいいので簡単です。
ヴォーカルを録音するに進んでください。
オーディオデータの場合は以下の手順でテンポを半分にします。
オーディオのテンポを下げる方法
①Pro Tools上に伴奏のオーディオデータをインポート
②テンポを入力
ここは正確でなくても大丈夫なので、テンポがわからなければ120のままでも構いません。
③トラックのタイムベースをティックにする
④エラスティックオーディオのアルゴリズムを「X-Form」にする
「Polyphonic」でも可能ですが、「X-Form」が音質的にオススメです。
アルゴリズムについて詳しくは後述。
⑤DAW上のテンポを半分にする
②で入力したテンポの半分の数値に変更します。
ヴォーカルを録音する
テンポを半分にしたら、次に、ヴォーカルを録音します。
普通に録るだけでOKです。
テンポを元に戻す
①ヴォーカルのトラックのタイムベースをティックにする
先ほどと同じく、メトロノームマークの「ティック」を選びます。
②エラスティックオーディオのアルゴリズムを「Varispeed」にする【重要】
③テンポを元に戻す(倍にする)
これでコロ助声になりました!
実はこれ、実川氏が『はじめてのチュウ』の録音をした時の手法をDAW上で再現しただけなんです。
録音時にテープを半分のスピードで回しながらゆっくり歌い、再生時には通常のスピードで再生するという手法によって、エフェクト処理を施した様な可愛らしい歌声を作り出した。
同じような手法に、フォーククルセダーズの『帰って来たヨッパライ』なんかがあります。
エラスティックオーディオとは?
エラスティック(ELASTIQUE)とは、ドイツのZplane社が開発したオーディオのタイムストレッチストレッチ*1エンジンです。
そして、それをPro Toolsが採用したのがエラスティックオーディオ機能というわけです。
ちなみにPro Tools専用のエンジンというわけではなく、Cubaseなどの他のDAWや、KONTAKTのようなプレイバックサンプラーなんかでも採用されています。
本来は、はじめに伴奏のテンポを落とした時のように、オーディオデータをセッションのテンポに追従させるのが主目的です。
が、Varispeedというアルゴリズムはテンポを変更すると素材のピッチも上下するので、それを利用してコロ助声を作ったということです。
Pro Toolsでは以下の5つのアルゴリズムから、素材によって適したものを選ぶことで音質の劣化を極力抑えることができます。
Polyphonic:和音、もしくは複数のパートが混じった素材向け
Rhythmic:ドラムなどリズムトラック向け
Monophonic:ヴォーカルなど単音の素材向け
Varispeed:唯一、テンポを変更すると素材のピッチもそれに追従するアルゴリズム
X-Form:音質最優先のアルゴリズム
Polyphonic、Rhythmic、Monophonicは処理速度優先のアルゴリズムです。
今回もPolyphonicでテンポを半分にしてもよかったのですが、音質の劣化が大きくて歌いにくかったのでX-Formにしました。
この記事を書いた人のTwitterはこちら。
*1:ピッチを変更せずにオーディオの長さを伸縮させる処理のこと。