バンドの演奏と合わせて、あらかじめ打ち込んでおいた(あるいは録音しておいた)音源を再生することを"同期"と言います。
もうちょっとカッコつけた呼び方だと"シーケンス"なんて言うこともあります。
いわゆる"同期モノ"のバンドとして有名なのはUVERworldやTHE MAD CAPSULE MARKETSなどでしょうか?
【参考楽曲】UVERworld『IMPACT』
最近ならYouTuberでもある夕闇に誘いし漆黒の天使達なんかもそうですね。
【参考楽曲】夕闇に誘いし漆黒の天使達『I want to change the band name.』
ドラムの脇に同期用のMacBookが置いてあるのが見えます。
このあたりのバンドはリズムループなどのデジデジした音が入っているので、いかにも同期してます!って感じですね。
ですが、実際のところはどんなジャンルの音楽であっても、メンバーの生演奏以外の音をライブで流すには同期が必要です。
「スリーピースバンドだけどハモリは5人ぶん欲しい」とか、
「キーボードいないけどピアノの音を入れたい」とかいう場合ですね。
テンポを同期させなきゃならない
たとえばサビにだけ同期音源が入っている曲があったとして、
「せーの」で演奏を開始してもタイミングが合うわけないですよね。
そこで、生演奏と同期音源のテンポを合わせるために、最低でもドラマーだけはクリックを聞く必要があります。
しかし、ライブで客席にもクリックの音が流れてしまってはお話になりません。
そこで、
ドラマーはクリックを聴いているけれども、
客席には同期音源だけが流れるようにします。
どうしたら良いのか、必要な機材と接続方法をご紹介しましょう!
必要な機材
DAWソフト
CubaseやPro Tools、Logicといった一般的なDAWソフトでOKです。
以前ならMTRを使っての同期演奏が主流でしたが、最近ではもっぱらノートPCとDAWソフトで行うことが多いですね。
一昔前なら、「PCは本番中に止まる危険性がある」ということで敬遠されがちでしたが、今ではMTRとリスクの差はあまりありません。
むしろ、SSDのPCであればHDDタイプのMTRよりも安定性は上と言えます。
4chアウト以上のオーディオインターフェイス
DAWの音を出力する、4chアウト以上のオーディオインターフェイスも必要です。
写真のように、クリックを1-2chから出力、同期音源を3-4chから出力させます。
詳しくは後述しますが、1-2chアウトをドラマーが聴いて、3−4chアウトをPAに送れば良いわけです。
イヤフォンやヘッドフォン
ヘッドフォンでも構いませんが、カナル型イヤフォンがおすすめです。
カナル型であれば密閉度が高いので、周りの爆音にも負けずにクリックを聴くことが可能です。
演奏中に外れてしまわないかどうか、練習の際にもチェックしておくことが大切です。
特に激しく動くタイプの人は注意ですね。
普段使っているイヤフォンだと長さが足りないと思いますから、こういったイヤフォン用の延長ケーブルも用意しましょう。
また、インターフェイスにヘッドフォン端子がない場合は、
このようなYケーブルが便利です。
ヘッドフォンアウトが複数装備された機材
ドラマー以外のメンバーもクリックを聴きたいという場面もあるかもしれません。
たとえば、「ギターと歌だけになるセクションがある」とか、
「ドラマーのカウント無しで曲を始めたい」とかいう場合ですね。
そのような場合は、
BEHRINGER ( ベリンガー ) / AMP800 MiniAMP
こういうヘッドフォンアンプと呼ばれる機材や、
もしくは、
PRESONUS ( プレソナス ) / Monitor Station V2
こういうモニターセレクターと呼ばれる機材を使いましょう。
こういった機材にはヘッドフォン端子が複数装備されてますので、ドラマー以外のメンバーもクリックを聴くことが可能になります。
音量も個別で調整できるので、ドラマーはクリック大きめ、ベーシストはクリック小さめといったこともOKですね。
フォンケーブル
インターフェイスからPAに送るためのケーブルも必要です。
念のため長めのものを用意しておくのが良いでしょう。
インターフェイスの出力はバランスアウトが多く、TRSフォンを使うものですが、
PAの受けはアンバランスで受けるDIが基本になりますので、写真のようなTSフォンを用います。
もしくは、バランスのままPA側で受けてもらえるのであれば、
このような変換ケーブルでPA側のマルチコネクタボックスに入力させてもらってもOKです。
ただ、ボックスへの入力は「ヴォーカルマイクが何番で〜」など決まっているハコも多いので、遠慮してほしい となる可能性も大いにあります。
いずれにせよ、事前に確認しておくのがベターですね。
※バランス、アンバランスについてはこちらの記事をご参照ください。
接続方法
先ほども書きましたが、まずは準備として、
クリックと同期音源のデータを準備し、DAWに曲順通り貼り付けておきましょう。
ドラマーだけがクリックを聴く場合
クリックをインターフェイスの1-2chアウトから出力し、ドラマーが聴きます。
同期音源は3-4chアウトから出力し、PAのDIに送ります。
この場合は、インターフェイス→DIに繋ぐフォンケーブルが2本必要になります。
ドラマー以外のメンバーもクリックを聴く場合
同期音源を3-4chアウトからPAに送るのは先ほどと同じです。
クリックは1-2chアウトから出力し、一旦モニターセレクターやヘッドフォンアンプに接続してから、各メンバーが聴きます。
この場合は、インターフェイス→DIに繋ぐ2本と、
インターフェイス→モニターセレクターに繋ぐ2本の計4本のフォンケーブルが必要になります。
終わりに 注意点など
同期演奏は、生演奏だけでは表現できないサウンドを作りだせる魅力的な手段です。
クオリティの高いライブをするためにも、いくつか注意しておきましょう。
事前にライブハウスに連絡
PAさんはプロですから、当日の急なリクエストでも対応してくれないことはないです。
とはいえ、やはり事前連絡はしておいた方が、お互いに不安なく本番を迎えられますよね。
「PCからも音源を出力しますのでDIが2つ必要です」と伝えておきましょう。
特に、キーボードやエレアコなどがあるバンドは要注意です。
というのも、同期音源以外にもDIが必要なバンドだと、ライブハウスに常備しているDIだけでは足りない可能性もあるからです。
早めに確認しておくことが大切です。
DAWが止まらないようにする
本番中にDAWが止まらないように、なるべくPCの負担を軽くしましょう。
同期音源をオーディオデータ化し、プラグインも全て外した状態のファイルにしておきます。
また、バッファサイズは最大にし、バックグラウンドで動作するソフトを終了しておくことでもCPUの負担を軽くできます。
しっかり練習
当たり前の話ですが、リハーサルスタジオでしっかり練習しておくことが大切です。
演奏中にイヤフォンが外れないか?
クリックの音量はどれくらいが適切なのか?
同期音源をスタート/ストップするタイミングの余裕があるか?
などなど・・・。
実際のライブを模してリハーサルをしておき、準備万端で本番に挑めるようにしておきましょう!
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