おとてく

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作曲家/レコーディングエンジニアが書く、DTM、作曲、レコーディングメディア。

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実機のコンプレッサーって買った方がいいですか?

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Q.実機のコンプレッサーって買った方がいいですか?

プラグインのコンプレッサーを使ってるんですが、思うようにかっこいいミックスができません。
サンレコを読んでると、プロは1176とかLA-2Aとかのアウトボードを所有してますよね。
やっぱり実機のコンプを導入した方がいいでしょうか?

 

A.買わなくていいです。

こんにちは。
A.TARUI(@ototekublog)です。

正直、買わなくていいです。
というより、実機のコンプを使ったからといって極端に音質が向上するものではないというのが正しいですかね。
そもそも、実機をどれだけミックスで使うかは疑問です。

 

実機のコンプはミックスで使うのか

実機、つまりハードウェアのコンプレッサーってミックスでどのくらい使うんでしょうか。

あくまで僕の場合ですが、10回に1回も使ってないです。

その理由は主に4つありまして・・・

 

・スタジオにある台数分しか使えない

僕はレコーディングスタジオに出向いてミックスすることもありますが、それでもミックスはプラグインでほぼ完結させてます。

 

プラグインのコンプレッサーだったら、1つ買ってしまえば何トラックにだってインサート出来ます。

が、実機の場合は台数分しか使えません

1台のLA-2Aを、キックにも、スネアにも、ボーカルにも・・・というわけにはいかないんです。

 

もちろん、コンプを通した音を逐一録音すれば1台の実機を複数に使うことは可能ですが、

ミックスの終盤で「やっぱりアタックタイムをもうちょっと遅くしよう!」とか思ったらまたイチから繋ぎ直しです。

 

 

・コンディションを信用できない

プラグインっていつも同じ音がするんですよ。

実機はそうはいかないです。

下手したら、5分前と今で音が違う!なんてこともあります。

 

さすがにそれは極端でも、スタジオのメンテナンスによっては信用できないコンディションのものがあるのは事実です。

プラグインの方が実機より断然良い音がすることも珍しくありません。

UADプラグインとか、本当にすごいクオリティですよ。

 

・値段が高い 

個人で買うとなるとこれもデメリット要素ですよね。

 

さっきも書いたように、プラグインと違って1台買えば何トラックにでも使えるというものではないので、コスパという意味ではメチャクチャ悪いです。

 

質問者さんが例に挙げた1176は税込265,320円。LA-2Aに至っては459,800円(!)もします。(2021年4月現在 サウンドハウス価格)

お金がたくさんあるなら止めはしませんが・・・。

 

もちろん安くて品質が良いアウトボードもありますが、プラグインの方が遥かにコスパは良いですよね。 

1176LN / サウンドハウス

LA-2A / サウンドハウス

 

 

・物理的に出力→入力することによるデメリット

実機ですので、ミックスに使用するにはDAWの音を一旦出力して、コンプを通してからまたDAWに戻さなければいけません。

ここでレイテンシーが発生します。わずかな遅れですが、たとえばスネアの表のマイクにだけコンプをかけた場合、裏のマイクと位相ズレを起こしてしまいます。

 

また、使用するケーブルやパッチベイによって音質の変化(劣化)もありますし、ノイズ混入の危険性もあります。

じゃあ実機は要らないの?

じゃあ、そもそも実機要らないじゃん!という声が聞こえてきそうですが(笑)、

ミックスにほとんど実機を使わないというのはあくまで僕の場合で、積極的に使う方もたくさんいらっしゃいます。 

やはり、実機独自の音のカラーが存在するのは事実ですしね。

 

それと、ミックス時ではなくレコーディング時の掛け録りでは、現代でも実機が頻繁に用いられます

過去の記事があるので詳細は割愛しますが、 プロミュージシャンやレコスタが大量のハードウェアを所有する理由としては、掛け録りができる*1というのは大きいのではないでしょうか。

 

それと、実際に手で触る操作性の良さはプラグインにはないメリットです。

もっとも、慣れていない人にとっては、かえってデメリットになる部分かもしれませんが。

 

まとめ

・実機のコンプレッサーを導入したからといって、極端に音質が向上するものではない。

・実機をミックスで使うデメリットも存在する。

もちろん、実機コンプをミックスで使う良さもありますが、まずはプラグインでカッコイイミックスができるように頑張りましょう!ってことですね。

 

 

 

*1:プラグインの掛け録りはレイテンシーが発生するため一般的ではありません。ただ、最近ではDAWの前段階にミキサーソフト(Universal AudioのConsoleやRMEのTotalMixなど)を使うことで、DSP処理によるプラグインなら低レイテンシーで掛け録りできるようにはなってきました。